「FarmMart & Friendsの味の土台を支える、神山(徳島県)という土地は、eatripのオリジナル商品なども長年作ってもらっていて、縁の深い場所。 神山で育てた小麦も入った〈かまパン〉は本当においしくて、わたし自身がその味のファン。だから表参道にある自分の店〈eatrip soil〉でも販売させてもらっています。
そうした関係もあって、今回は親戚というか、友人代表みたいな立場から、看板メニューはドーナツがいいんじゃない?と提案したんです。せっかく〈超やわ食パン〉という人気商品があるし、そのパン生地をベースにドーナツをつくったら、きっとおいしいだろうなって。あと雑穀を使ったおにぎりみたいなドーナツも。
ドーナツは、1日中どの時間帯でも食べられて、子どもも大人も喜ぶし、甘くても塩味でもいい。食感としては揚げパンに近くて、翌日にあたため直してもおいしい生地だから、おにぎりやおもちみたいに、味の組み合わせでいろいろ広げていけそう。
ジャムの素材の果物や野菜も、各地の農家さんから届くものと合わせて、いつも神山と直接つながっていることが、FarmMart & Friendsの強みだし、魅力だと思う。他のオーガニック食品を売る店やアンテナショップとも違う、店のむこうに一つの土地の風景がちゃんと見える安心感は、やっぱり大きいから。
味だけでなく、この店の『場』としてのあり方も楽しみ。わたしはやっぱり『場』が好きで、東京ってなかなか地に足の着いた感覚を持ちにくいけれど、だからこそ、根っこがちゃんとある土地とつながっている、そういう場が東京にあることに意味があるなと思っていて。場所があればなんだってできるし、予期せぬことも起こるから。
奥のオフィスで働く人にとっては、かしこまってミーティングするより、ここでちょっと立ち話するほうがコミュニケーションとして有意義だったり、リモートで仕事できる日も、この店があるからという理由で出社したくなったり。「よりよく働くこと」を見つめ直す場としても機能していくんじゃないかな。
また、ご近所のお客さんにとっては、テイクアウトもできれば、カウンターでちょい呑みもできる、うれしい立ち寄りスポットになりそう。そういう場所が都心の、どこか生活の匂いも感じられる住宅街の一角にあるのは、なんだかいいですよね。
そんなふうに、みんなの日常のなかにFarmMart & Friendsを交差点みたいに置いて使ってもらいながら、ここを豊かな場所に、一緒に育てていけたらいいなと思います」
長年おもてなし教室を開いていた母の影響で料理の道へ。ケータリングフードの演出や料理教室、雑誌での連載やラジオ出演などに留まらず、レシピ開発、映画やテレビ番組の料理監修など、食の可能性を多岐に渡って表現している。生産者、野生、旬を尊重し、食のもつ力、豊かさ、美味しさを伝えられたらと東京原宿の一軒家で2012年restaurant eatrip(原宿)をオープン。生命の源であり循環を生む『土』をテーマに今までの長年の活動から出逢ってきた方々の食材を中心としたお店eatrip soil(表参道)を2019年12月にオープン。人生は食べる旅。その思いに共鳴する仲間たちと食の活動”eatrip”を続けている。